【前編】秩父銘仙の現代物を買いました

現代物の秩父銘仙を店舗で着装する人

秩父銘仙の現代物を着装してみた

有名な着物の産地はどんな遠方にあっても気になるもので、地元にあれば猶更気になるものだ。聞き慣れた地名を冠した織物は、先ずこのあたりで暮らす者が胸を張っておしゃれに着ておきたい。そんなわけで、北埼玉人が主にレジャーの方面でお世話になっている秩父生まれの、「秩父銘仙」をお仕立てした。

現代物の秩父銘仙を強く意識するようになったきっかけは、2019年1月開催「埼玉WABI SABI大祭典2019・きものサミット」である。イベントでは秩父市地域おこし協力隊として活動した関川さんが発表をされていて、そこで銘仙をつくる人と初めて対面したのだった。銘仙といえばアンティーク着物のイメージがあったので、当日にお召しになっていたモダンな着物がご自身で織った銘仙だと聞き、大きく印象が変わったのを記憶している。

秩父に行きたい、現地で反物を見たいと思いつつ、着物への関心が一気に高まったタイミングで気軽な外出が憚られる社会情勢になってしまった。あれからはや数年が過ぎ、お世話になっている「きものこすぎ」さんで秩父銘仙の新作展があると聞いて、いよいよ自分にもチャンスがやって来たのだと確信(!)。自宅からすぐの熊谷で、新啓織物さんの新作にお目にかかれた。

反物の迫力に驚き

紫色の地に白い花が描かれた秩父銘仙の反物
秩父銘仙の現代物

会場で何枚もの銘仙を見せていただき、やっと選んだのがこちらの一枚。写実的な絵柄だが、なんと“夢の花”と名付けられた架空の植物だそうで、遠目に大ぶりな花のように見えるのは、実は葉のような何らかの集まりだったりする。定番の花柄と見せかけて一ひねり、わたしはこういうのに弱い。きっとお店の方にもばれています。

体に反物を巻いてみると、想像よりずっと似合っていたので一安心した。というのも、あの銘仙らしい柄行きが果たして自分に似合うのかと、薄々心配していたからである。わたしの雰囲気に銘仙は可愛すぎてしまうかしらと思いきや、案外色んなテイストの反物があるので、どんな人でも選び甲斐がありそうだ。

強めの紫色なので初めはコーディネートにも不安を感じていたが、実際は黒系や赤系の帯をはじめ案外ばっちり合わせやすく、手持ちとも幅広く組み合わせられそうだ。八掛は箪笥の中身との相性を考慮して、深みのある納戸色にした。

銘仙は写真映えする?!

特筆すべきなのは、なんといってもこの映え感! スマホのカメラを向けたとき、あまりに綺麗に撮れるのに驚いて「えっ?」と声をあげてしまったほど。なんの工夫もせずに、ただ写真を撮っただけでこんなに人目をひく着物はなかなかない。カメラの知識も技術もないので、手元の着物の魅力を十分に伝えきれず、もどかしい思いをすることがよくある。とにかく映える銘仙にそんなお節介は無用なようだ。

後編では、仕立てあがった銘仙と、生産者の方との交流について記録に残す予定。


おまけ

着物を題材にした小説を書きました。ほんの少しですが、秩父銘仙も登場します。作品の紹介ページもご覧になっていただけたらうれしいです!

毎週末に着物を着る生活をエッセーに綴りました。着物を着る方には、きっとクスッと笑ったり共感したりと、一緒に楽しんでいただけるはず! Instagramに載せたお気に入りの写真も何枚か掲載しています。お手に取っていただけますと嬉しいです。