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長瀞の秩父織塾工房横山で染織教室を見学【写真付きレビュー】

秩父織塾工房横山(横山織物)の看板の前に立つ着物の人
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今回は、埼玉県秩父郡長瀞町へ足を運び「秩父織塾工房横山(横山織物)」さんの染織教室の様子を取材してきました!

「秩父織塾工房横山」は、大正15年に創業した秩父銘仙の織元です。取材当日は、秩父銘仙の技法を学ぶ生徒さんの様子や、現代物の秩父銘仙の反物まで、現地でたっぷり見せていただきましたよ。

この記事では、染織教室の様子や、秩父銘仙の反物の写真などをご紹介します。秩父銘仙に興味がある方や、長瀞エリアの日帰り観光で染め・織りを体験してみたい着物ファンの方は、ぜひご覧ください♡



長瀞で学べる秩父銘仙の染織教室

秩父織塾工房横山の工場を見学する着物の人

「秩父織塾工房横山」さんでは、本格的な染織教室日帰り観光向けの簡単な体験の両方が開催されています。埼玉県の伝統的工芸品・秩父銘仙を本気で学びたい方から、長瀞観光で思い出を作りたい方まで、レベルに合わせて教えてもらえますよ♡

まずは、染織教室の様子をご紹介します。


秩父銘仙の制作を本格的に学べる染織教室

秩父銘仙織元の横山さんは、秩父地域に続く織物技術の研鑽や伝承を重視していらっしゃるそうです。そこで、大切な技術を次世代へつなぐために、現代物の秩父銘仙を製造しながら後継者育成を目的とした染織教室を開催しています。現役の織元さんから本格的に秩父銘仙の機織りや捺染を学べるなんて、貴重な機会ですよね!

このように、当日は工場内で染織教室が開催されていました。さっそく生徒さんたちにお願いして、機織りの様子や制作途中の作品を見せていただくことに。

こちらの工房では、手足を使って布を織る仕組みの、昔ながらの「高機」を使って制作しています。ベテランの生徒さんが織るときの、トントンという機音のリズムが心地いい……。昔の工場や農家の近くではこんな音が聞こえていたのかな、なんて想像が広がります。

こちらは生徒さんが制作中の作品です。左はシンプルな縞模様で、ブルー系の配色が美しいですね。右は2種類の柄をそれぞれ捺染して糸を交互に組み合わせた、ちょっと複雑な織り方となっています。教室ではこのような難しい技法も横山さんがバッチリ教えてくださるので心強い!

秩父織塾工房横山の工場で織られている併用絣の銘仙

さらにこちらの織機では、経糸と緯糸の両方を捺染して織る併用絣が作られていました。現在、併用絣の銘仙を織る技術を持っている織元は「秩父織塾工房横山」さんのみとなっています。つまり、世界中でここでしか見られない貴重な制作風景というわけです!

さて、画像左下に丸印をつけた箇所があります。紺色のドットが縦方向と横方向の両方にずれているのがわかるでしょうか? これは併用絣に特有のずれ方になります。絣の着物が好きな着物ファンには、この風合いがたまらないんですよね♡

着物を楽しむわたしたちにとって、作り手の皆さんはとても大切な存在です。現在の秩父には、幸いにも専門家から直接技術を学べる環境があります。秩父銘仙の作り手として本格的に技術を学びたい方は、「秩父織塾工房横山」さんの門を叩いてみてはいかがでしょうか?


日帰り観光向けの簡単な染め・織り体験もできる!

秩父織塾工房横山の講師である横山さんと、着物姿の著者が並んでいる

ちなみに、「秩父織塾工房横山」さんでは、日帰り観光向けの簡単な藍染め体験・草木染め体験・機織り体験も開催されています(※要事前予約)。ハンカチやTシャツを染めたり、コースターやランチョンマットを織ったり、秩父銘仙のタペストリーを捺染したり……日帰りのメニューは初心者でも安心して参加できるそうです。

各種体験の予約は、公式サイトの問い合わせフォームのほか、電話・メール・InstagramのDMなどから申し込みできます。着物ファンが秩父・長瀞エリアへの小旅行で立ち寄るのもおすすめですよ♡


秩父織塾工房横山が手掛けた秩父銘仙の反物

ここからは着物ファンお待ちかね、現地で横山さんに見せていただいた現代物秩父銘仙の反物をたくさんお披露目していきます!

「秩父織塾工房横山」の秩父銘仙は、併用絣・半併用絣・ほぐし織・ヤナセ絣などの多彩な技法を生かしたものづくりが魅力となっています。もし気になる反物があれば秩父織塾工房横山公式InstagramへのDMでお問い合わせしてOKだそうです。「この銘仙、着てみたい!」とピンときたら横山さんに連絡してみてくださいね。


珍しい技法の現代秩父銘仙が勢ぞろい!

秩父織塾工房横山(横山織物)の秩父銘仙の反物が撞木に飾られている

まずは、珍しい技法が勢ぞろいのコーナーから見ていきましょうか。左奥の反物から時計回りに、「半併用絣」の銘仙(紺色)、「ヤナセ絣」の銘仙(ピンク色)、「ほぐし織」の銘仙(薄紫色)、「併用絣」の銘仙(水色)です! このうち半併用絣や併用絣の銘仙は、経糸と緯糸の両方を捺染して織る、複雑な作りとなっています。

秩父織塾工房横山(横山織物)のヤナセ絣を拡大した様子

こちらはヤナセ絣の着物の袖部分を拡大した写真です。実は、ヤナセ絣も経糸と緯糸の両方を捺染して作られているんですって。ヤナセ絣とは、横山さんが長年にわたり併用絣の技法を研究して開発した”新銘仙“のこと。経糸と緯糸に異なる柄を捺染して織られているので、まるで2つの柄が浮かび上がるかのように見えます。なんと美しいのでしょう♡


現代物の秩父銘仙

さて、続いてどんどん秩父銘仙の反物を見て行きますよ! ここからは、着物好きで現代銘仙好きなわたしの目線で魅力を感じた反物をピックアップしてご紹介します。

秩父織塾工房横山の秩父銘仙(グレーの反物と、ピンクの反物)

手前はヤナセ絣の銘仙(ピンク色)、奥は2種類の柄を交互に組み合わせた銘仙(濃いグレー)です。どちらも銘仙ならではの技法を生かした表現となっています。この柄の立体感、実物を見て体感していただきたいですね!

秩父織塾工房横山の秩父銘仙(紫の反物と、赤の反物)

手前は玉虫効果のあるほぐし織の銘仙(赤色)、奥はほぐし織の銘仙(紫色)です。玉虫織の銘仙は、経糸と緯糸に離れた色を使うこと、角度によって色が変わって見えるという特長があります。

玉虫織の銘仙は、動く度にきらきらと色が変わって見えるのが大変美しく、これこそが着物に仕立てたときの醍醐味になります。こちらの動画で、赤い地の色が青に変わる美しい玉虫効果をぜひご覧になってみてください。

秩父織塾工房横山の秩父銘仙(紺の反物と、黒い花の反物)

手前は緯糸に捺染した糸を使用した銘仙(黒)、奥はほぐし織の銘仙(紺色)です。ほぐし織の銘仙に緯糸の表現が加わることで、また違った質感が楽しめるようになります。

ここまで、さまざまな趣向を凝らした銘仙がありました。ブログをご覧の皆さまにも、横山さんがいかに銘仙の技法を研鑽されているか伝わったのではないでしょうか?


現代物の男物銘仙

銘仙といえば、大正時代の女学生に始まり女物のイメージが強くあります。そんな中で横山さんは、男物銘仙の制作にも今後さらに力を入れていきたいそうです。

秩父織塾工房横山の男銘仙(龍の反物)

手前はほぐし織の銘仙(黄色)、奥は半併用絣の銘仙(灰色)です。龍の反物は、きっと羽織にしても格好いいでしょうね……!

ちなみに、この龍は横山さんがデザインを手掛けています。右側の写真は、仮織りして捺染した経糸です。うっすらと龍の顔が見えるでしょうか? ほぐし織の銘仙はこんな風に作られているんですよ。

横山さんは龍のほかにも、ドクロや蜘蛛の巣などのデザインがお好きとのことです。この系統が好きな着物男子、いるでしょ!? 「こんな男銘仙が欲しい!」というビジョンをお持ちの方は、ぜひ横山さんに相談してみてください。


秩父織塾工房横山の銘仙生地を使ったおみやげ

体験や見学を終えたら、長瀞・秩父観光の思い出におみやげを買って帰りましょう♡ 「秩父織塾工房横山」さんの敷地内には、秩父銘仙の生地を使ったファッションアイテムや小物を販売するショップがあります。

秩父織塾工房横山(横山織物)の秩父銘仙を使ったおみやげ

着物以外でも秩父銘仙を普段のファッションに取り入れたいという着物ファンの方も多いはず。そんなときは、日常使いできる秩父銘仙のストール・スカーフ・バッグなどのおみやげを連れ帰ってみてはいかがでしょうか。

秩父織塾工房横山(横山織物)の秩父銘仙を使った帯留

ちなみにわたしはこの帯留に惹かれて迷わず手に取りました。中心部に銘仙の絣がいい具合に出ていて綺麗! 生地と同じグリーンの三部紐と合わせてコーデしてみたいな。

染織教室にお買い物に、銘仙を学んで体験して楽しめる「秩父織塾工房横山」さん。長瀞エリアは駅周辺に観光スポットが充実しているので、日帰り観光におすすめです。ぜひ事前予約の上、体験や見学に行ってみてください♡

秩父織塾工房横山さんについては、こちらの関連記事でもご紹介しています。


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