ちちぶ銘仙館で開催された展覧会「昭和百年メイセン・クロニクル展ー銘仙年代記ー」へ遊びに行ってきました!
今回の銘仙イベントは、第1期・第2期・第3期にわたり開催される大規模な展示内容となっています。各会期で時代を追いながら、銘仙着物の歴史を学べるようになっているんですって♡
このレポートでは、各会期の展覧会の様子をお届けします。気になったらぜひ、秩父市のちちぶ銘仙館ギャラリーへ足を運んでみてくださいね。
| 【イベント詳細】 会期: 第1期 2025年9月13日(土)~10月11日(土) 開催場所:ちちぶ銘仙館ギャラリー |
銘仙の歴史を学べる展示

「昭和百年メイセン・クロニクル展ー銘仙年代記ー」の見どころは、これまで時代ごとの体系的な展示がなされてこなかった銘仙着物を、時代の流れに沿って鑑賞できること! 展示品はいずれも、秩父銘仙をはじめとした各産地の生地見本・織物組合史・雑誌などの一次資料に基づいて選定されているそうです。
普段の銘仙館の展覧会以上に豊富な銘仙コレクションが展示されていて、キャプションも充実しているので、じっくり学びたい方は時間に余裕を持って行くのがおすすめですよ♡
【第1期】 大正から昭和の銘仙着物
| 【イベント詳細】 会期: 第1期 2025年9月13日(土)~10月11日(土) 開催場所:ちちぶ銘仙館ギャラリー |
「昭和百年メイセン・クロニクル展ー銘仙年代記ー」第1期で展示されるのは、大正から昭和初期の銘仙着物です。

銘仙といえば、鮮やかな色柄の着物を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。わたし自身も、これまでの銘仙展や書籍で見たものは、色鮮やかなものが大半を占めていました。ところが、秩父をはじめとした産地に残された資料に基づいて大正から昭和初期の銘仙を並べると、会場全体はこんな落ち着いた色合いに。ちょっと意外ではないでしょうか?

色柄は落ち着いていますが、よく見ると凝っている織物の多いこと! この羽織の絣模様は変則的で細かいですねぇ……。縞や絣の素朴な銘仙に花文様の半衿が愛らしいコーディネートです。
ちなみに、展示されているトルソーのコーディネートや着付けまで、当時の資料に基づいて再現されているそうです。現代で一般的に好まれる着付けと違って、衿をほとんど抜かずに着用していたことがわかります。

展示品の中には、現代の秩父銘仙に続く技法「ほぐし織」の銘仙も。ただ、この時期には経糸を捺染することに加えて、さらに緯糸にも趣向を凝らした銘仙が多く見られます。
この植物の葉と抽象文様の銘仙も、緯糸によって独特の表情が出ていますね。着物好きな方ならきっと一点一点じっくりと眺めたくなるはず♡

こちらは、括り染め・板締め染めによって複雑な絣模様を作る「珍絣」の銘仙や、抜染の加工を施した銘仙が集まっている一角です。こんな銘仙も作られていたの?! 銘仙の技法の中でも、一般的によく知られている「ほぐし織」「併用絣」「半併用絣」以外に、伊勢崎銘仙を中心として作られていた技法の特色を見られます。

カフェーの女給さんをイメージしたレトロで可愛い一角も。鮮やかな色の銘仙ももちろん好きですが、個人的には絣着物の風合いが好きなので、第1期で見たような落ち着きのある凝った織り方の銘仙にも強く惹かれます。すでに銘仙が好きな方も、これまでとは違った角度から銘仙の魅力と改めて出会えるかもしれませんね。

ちなみに、当日の会場には秩父銘仙の織元「新啓織物」さんがいらっしゃいました。展示されている銘仙の技法を見ては、「どのように作ったのだろう?」と真剣な目つきで分析していた織元さん。それほどにじっくりと見る価値のある銘仙着物が集まっています!
『昭和百年メイセン・クロニクル サテライト展』
2025年10月18日・19日、秩父市の寺内織物母屋にて本展覧会のサテライト展が開催されました。こちらの関連記事では、18日に開催されたイベント「復刻秩父銘仙と復刻珈琲」をレポートしています。
【第2期】 昭和恐慌から戦争の銘仙着物
| 【イベント詳細】 会期: 第2期 2025年10月25日(土)~11月22日(土) 開催場所:ちちぶ銘仙館ギャラリー |

「昭和百年メイセン・クロニクル展ー銘仙年代記ー」第2期で展示されるのは、昭和恐慌から終戦までの銘仙着物です。


第1期の展示と見比べてみると、会場全体が一気に色鮮やかになりました。いわゆる銘仙と聞いて多くの方が思い浮かべるのはこんな雰囲気ではないでしょうか。ところが意外なことに、こんな楽しげな銘仙たちの時代背景には恐慌や戦争があったそうです……。

会場には国防婦人会のタスキをかけて割烹着をつけたトルソーが展示されていました。なお今回の展示品には含まれませんが、戦時中に作られた銘仙の中には「国防調時局銘仙」のように戦争に関するモチーフが描かれたものもあります。銘仙の美しさを楽しむにあたって、このような事情を知っておくことも大切ですよね。

銘仙が大流行した全盛期には、各産地が競い合って宣伝を行い、このようなポスターも作られたそうです。たとえば写真中央に展示されている秩父のポスターには「銘仙は秩父」というコピーが書かれています。ちなみにこちらは、ちちぶ銘仙館の入館券に使われているデザインなんですよ♡

まるで着る絵画、なんて言いたくなるような見事な併用絣の銘仙もありました。第2期は色鮮やかな銘仙を楽しめることはもちろん、その時代背景にも触れられる展覧会となっています。
【第3期】 戦後復興期の銘仙着物
| 【イベント詳細】 会期: 第3期 2025年12月6日(土)~2026年1月10日(土) 開催場所:ちちぶ銘仙館ギャラリー |

「昭和百年メイセン・クロニクル展ー銘仙年代記ー」第3期で展示されるのは、戦後から復興期の銘仙着物です。

抽象文様のグラフィカルな銘仙が目立ちます。第2期と比べてますます色使いが鮮やかになりましたね。会場全体がアーティスティックな雰囲気に。


戦後の日本経済の復興とともに、銘仙のデザインは華美を極めました。しかし、多くの着物ファンの方がご存じの通り、これほど勢いのあった銘仙はやがて流行の終焉を迎えることになります。そう考えると、展示会場はこんなに賑やかなのにちょっと切なくなりますよね……。


第3期の展示では「夜具地(=布団などの寝具に使われた布地)」「座布団地」「併用絵」なども展示されていました。当時の産地には、銘仙の着尺からこれらの商品の生産へ移行し、織物の事業を継続する事業者もいました。現在秩父で活躍している一部の織元さんも、かつて夜具地や座布団地を生産していたことがあるようです。
つまり、華やかで可愛い銘仙着物と形は違えど、これらの商品も秩父銘仙を現代へと繋いでくれた大切な織物なのですよね。この先、どこかの展覧会で夜具地などを見かけたら、少し足を止めて銘仙の歴史に思いを馳せてみてはいかがでしょうか♡

展示されている「併用絵」を拡大してみました。ネズミを描く線が縦横方向にわずかにずれていますね。ここまで近づけば、まるで筆で描いたように見えるこの作品が併用絣の技法で表現されていることがよくわかるはず。絵画と思って併用絵を見逃すことがないようご注意ください!
「昭和百年メイセン・クロニクル展ー銘仙年代記ー」は、あらゆる角度から銘仙の歴史に触れて楽しめる素敵な展覧会でした。ここまで第1期・第2期・第3期とレポートにお付き合いいただきまして、ありがとうございました♡
週末着物日記『未衣子の楽しい着物ブログ』は、“毎週末に着てマイペースに楽しむ埼玉近郊の着物ブログ”です。三築 未衣子の著者プロフィールはこちらからご覧いただけます。
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エッセー『週末着物の五年間』
週末着物生活5年目を迎えて書いたエッセーです。反物のお仕立てからレンタル着物まで楽しみ方はさまざま。着物パーティーを主催した経験や、秩父銘仙の織物・養蚕事業者の皆さまとのエピソードにも触れています。相変わらず元気に遊ぶ着道楽な日々を一緒にお楽しみいただけましたら嬉しいです。
エッセー『週末着物の三年間』
埼玉県の最北端で元気に遊ぶ着道楽のエッセーです。週末着物生活3年目の頃に書きました。着物を着る方には、きっとクスッと笑ったり共感したりと、身近に感じて楽しんでいただけるのではないでしょうか。読めばきっと着物生活を根気よく続けるヒントが見つかるはず。
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