この記事では、祖母の遺品で、袖丈の短い着物をお直しに出した様子をご紹介します。
前回、わたしの元へやって来た祖母の着物たち。お世話になっている着物屋さんでクリーニング&仕立て直しに出して、ついにわが家へ戻ってきました。まず、お直し後の祖母の着物を着た様子はこちらです!
お直しをしたのは、小豆色の辻が花訪問着と、浅緑色の刺繍訪問着の2着です。袖に手を通した瞬間、「おばあちゃんもいつか、こうやって手を通したかな」と想像して、じーんときてしまいました。着物をクリーニングに出したことは何度もありますが、大切な着物がきれいになって戻ってくる有り難さに、これほど感じ入った日があったかな。
おばあちゃんの遺品の着物は、裄や身丈が小さいことも。思い入れのある特別な着物はお直しに出して、気軽に着られるようになったら嬉しいですよね。
祖母着物を仕立て直しした箇所は?
今回仕立て直しに出した2着の着物は同じ寸法で、直した箇所はいずれも袖丈のみです。
現代の一般的な袖丈は1尺3寸(約49cm)とされていますが、この着物は1尺2寸(約45cm)しかありませんでした。着物の袖丈が短いと、袖の内部に収まりきらなかった長襦袢の袖が折り畳まれることになります。折り畳んだまま着られなくもないのですが、試着してみると着物の袖がもったりと膨らんでしまいました。全身のバランスを見たところ、自分自身が許容できる範囲を超えているように思われたので、今回お直しに出した次第です。
ちなみに、昔の人の着物といえば裄と身丈が足りない問題が定番ですが、祖母の着物は裄も身丈もぴったりで調整は不要でした。祖母・母・私と親子三代で似たような背格好をしているからです。ラッキーですよね。でも、そうだとしたらなぜ袖丈だけがこんなに短いのでしょうか? それも、動きやすさ重視の普段着ではなく、訪問着なのに?
真っ先に裄と身丈をチェックして「このまま着られるじゃん!」と舞い上がった次の瞬間、袖丈が短いと気づいて、ちょっと凹みましたね(笑)。このような袖丈だけが短い着物の謎、もし解ける方がいらっしゃったら、どこかでこっそり教えてください。
仕立て直しのビフォーアフター画像
辻が花訪問着のBefore After
左が仕立て直し前、右が仕立て直し後です。悉皆屋さんへ相談した際、折り込みがあれば可能な限り出してくださるとのことでしたが、無事に希望した1尺3寸に仕上げていただきました。
Beforeでは、絵羽模様の植物の葉の先が、袖の端すれすれに配置されています。お直し後は少しゆとりのある配置に変わりました。ご覧の通り元の袖の位置に目立った跡などもなく、自然な印象です。
刺繍訪問着のBefore After
左が仕立て直し前、右が仕立て直し後です。こちらの着物は、通常の畳み方をすると無地の面が表になるため、あえて柄の面が出るように畳んで撮影しました。
1枚目の着物よりも違いがわかりにくいですが、刺繍された植物の根元から袖の端までの長さに注目してみてください。こちらもお直し後、違和感なく着られそうです。
祖母の遺品をお直しに出した判断基準
着物のお直しにはそれなりにお金がかかります。マイサイズは着付けが楽なので、できることならば全ての着物をお直しに出してしまいたいくらいですが、わたしは賢くお金を使わなければならない身分……。というわけで、あれこれ考えた結果、以下の理由から仕立て直しに出すと決めました。おばあちゃんの着物のお直しを考えている方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
訪問着(付下げ)だったから
今回お直しに出した2着は、いずれも訪問着です。普段着だったら袖丈くらい気にせず着てしまうのですが、「勝負服で妥協はしたくない!」という気合いで仕立て直しを決めました。今後はキラキラ女子会や軽いパーティーなどへ着て行くつもりです。どうかたくさんのお誘いがありますようにと、星に祈っておきます。
継いだ着物の総数が少なかったから
これらの着物は、母が祖母の遺品整理で厳選して、ほんの一部を持ち帰ってきたものです。そもそも受け継いだ点数が多くなかったので、限りある数着をすっきり直してしまおうという考えに至りました。もし継いだ着物の総数が多くて、どれも寸法が合わなかったとしたら、直さずにおく着物も多くあったかもしれません。
着物の保存状態が良かったから
祖母の着物は長らく桐箪笥に放置されていたのに、カビやシミ、虫食いの被害を免れきれいな状態でした。まるで新品のようで長く着られそうだったのも理由の一つです(きっと本人はあまり着られなかったのでしょうね……)。お直し後も長く着られるか、着物の状態まで考慮すると、気持ちの整理がつきやすくなると思います。
おまけ
祖母の着物がやって来た日の記事です。クリーニングでお店へ預けてからずっと、家へ戻って来る日を楽しみに待っていました。そんな祖母の着物に対する思い入れを書いています。
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