着物ファンにとって9月といえば、待ちに待った単衣解禁の月――ですが、現実の9月は猛暑日の連続。相変わらず着付けの時点で汗ばむほどの暑さで、とても単衣を着ている場合ではありません。その一方で、7月~8月中にめいっぱい浴衣や薄物を楽しんだ後は、そろそろ夏の装いにも飽きて、早く次の季節のものを着たくてたまらないですよね?
真夏と変わらぬ暑さが続く9月。着るものに困ったら、無理せず夏物を着ながら、同時に秋感も取り入れて新鮮なコーデに仕上げましょう! ここでは、秋前の9月に着物のおしゃれを楽しむためのポイントをご紹介します。
9月の着物コーデ実例
筆者が9月中に着た着物コーデを、当日の埼玉県熊谷市の気候と併せてご紹介します!
【2024年9月8日】晴時々雨/34.5℃~25.7℃
小千谷縮×半幅帯。小千谷縮といえば夏の定番ですが、濃い紫色なら盛夏を過ぎても寒々しさがありません。こっくりとした赤い帯締めを使ってコーデすると、紫の着物が秋へと向かう装いに見えてきます。単に差し色として扇子を使ったつもりが、歩いているうちに汗が噴き出してきたので、心から「持ってきてよかった!」思いました。(笑)
【2024年9月7日】晴/35.0℃~23.8℃
綿麻×ゴブラン織の名古屋帯。この日は夕方からのお出かけでした。長着と長襦袢は洗える素材にして、帯だけ秋を先取りしています。着物が涼しげな色なので、その分帯と小物で意識的に秋色を取り入れて、気分をリフレッシュ。この綿麻は盛夏に何度も着ましたが、取り合わせを工夫するだけで、新鮮な気分で着られるようになりました。
【2023年9月17日】曇のち晴/34.3℃~24.8℃
化繊の絽×紗の帯×薄羽織。長着と帯の組み合わせは、爽やかなブルーで揃えた夏前にふさわしい装いになりそう。そこへ藍色の帯揚げと臙脂色の帯締めを加えてみました。帯周りに深みのある色が入るだけで、一気に秋へ向かう装いに変わります。当日は汗だくになるほどの暑さ。9月中旬もまだまだ洗える素材が活躍してくれそうです。
【2023年9月9日】晴のち雨/29.4℃~21.3℃
小千谷縮×博多帯×薄羽織。葡萄の帯留めを主役に、実りの秋をイメージしたコーデです。時々「薄羽織を着ると暑くありませんか?」と訊かれますが、すでに長襦袢と長着を着てしまっているので、2枚着ようが3枚着ようが暑いものは暑いです。薄羽織を諦めたところで劇的に涼しくなるわけでもないので、着たかったら着ることにしています。
夏着物を使って秋感を出すポイント
ここまでご紹介した9月のコーデで着用しているのは、どれも夏物や洗える着物ばかり。暑さや汗の対策をしながら、これまでの季節とは一味違う装いにするために、以下のポイントを意識しています!
1.秋色の夏素材を活用する
夏素材でかつ濃い色・暗い色・暖色などのアイテムがあると、9月のコーデで活躍します。盛夏には暑苦しく見えそうで、通常はあまり手を出しにくいチョイスかもしれません。でも、秋前になればきっとその真価を知ることになるはず……。1着あるととっても頼りになりますよ。前述のコーデで着ている濃い紫色の小千谷縮が好例です。
2.通年の帯を取り入れる
盛夏を過ぎて一足先に秋を感じたくなったときは、通年使える帯を締めると気分が変わります。季節を問わない便利な帯といえば、平織(薄くて軽い!)の博多帯ですね。通年使えるとはいえ、真夏のコーデではやはり透け感のある帯を選びたくなるもの。一方、気分を変えたい9月は、まさに通年の強みを生かすチャンスです!
3.帯小物に秋色や秋モチーフを使う
帯留めや帯締めといった帯周りの小物は、どんなに早く秋を先取りしようが、着ている人の暑さにはなんの影響も与えません。我慢をせずに秋感を楽しみたいなら、まずここから始めるのが良いかと思います。帯小物はかさばらないので、数を揃えても保管の負担が少ない点もいいですね。たくさん集めて省エネで季節感を演出しましょう!
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