今回は、我らが埼玉のお隣にある、群馬県の「富岡製糸場」へのお出かけです。
着物ファンにとって群馬といえば、関東圏でもとりわけ絹産業が盛んな地域。なかでも富岡製糸場は、2014年に「富岡製糸場と絹産業遺産群」として世界遺産に登録されており、いつか行ってみたいと思っている方も多いはず!
この記事では、そんな富岡製糸場を見学して、着物ファンとして注目したポイントをご紹介します。ご紹介するのは施設のほんの一部ですので、気になったらぜひ足を運んでみてくださいね。
富岡製糸場の敷地内には、国宝に指定された建物が数多くあります。館内の展示を通じて製糸業や養蚕といった着物にまつわる知識を学べるうえに、明治時代に作られた当時の建物そのものを体感できるのが魅力です。
東置繭所(国宝)
こちらは東置繭所(国宝)の建物です。置繭所は、工場で使用する大量の繭を貯蔵していた場所。ご覧の通り非常に大きな建物で、しかも東西にそれぞれ棟があるのです。こんなにたくさんの繭を扱っていたのかと圧倒されます。
富岡製糸場といえば、このレンガ造りの建物を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。入口のアーチをよく見ると、中央に「明治五年」と富岡製糸場が設立された年が刻まれています。
東置繭所の展示室入口には、筆で「原料課」と書かれた看板がありました。こうした細かな部分からも、操業していた頃の雰囲気を感じ取れます。
繰糸所(国宝)
こちらは繰糸所(国宝)の建物です。当時の女工さんたちが糸を取る仕事をしていた場所ですね。ほかの建物と異なり、大きな窓が一面に隙間なく配置されています。糸取りの作業をするために、電気のない室内に自然光を取り込む工夫がなされているのがよくわかります。
そんなわけで、繰糸所の室内は電気がなくてもこの通りの明るさです。柱のない広々とした空間に、操糸機がずらりと並んでおり、天井には繭を搬送するレールが設置されています。これらの機械は、富岡製糸場が操業を止めた当時のままの状態となっているそうです。
この写真は操糸機の一部なのですが、糸を取る装置がこれだけ多くありました。実際に繰糸所の広い空間に立ってみると、かつての富岡製糸場における大量生産の規模をより具体的に実感できるのではないでしょうか。
なお、繰糸所では時間帯によって糸取りの実演を見学できます。たくさんの操糸機がどのように稼働していたのかイメージしやすくなるので、ぜひご覧になってみてください。
西置繭所(国宝)
こちらはもう一つの繭置き場である、西置繭所(国宝)の建物です。館内では当時の富岡製糸場での働き方や、絹の産地である群馬県の見どころなどを学べます。展示は撮影NGとなっているので、訪れてからのお楽しみということで。
西置繭所では2階のデッキに出られます。撮影OKのデッキから、大きな建物が並ぶ敷地内を一望できました。あの丸いものは、工場で使う水を溜めておくための「鉄水溜」ですね。高いところから見ると、その大きさに改めて驚きます。
「富岡製糸場と絹産業遺産群」の世界遺産登録記念碑
敷地内の隅のほうに、見晴らしのいい場所がありました。すぐ近くを流れている鏑川の水は、富岡製糸場の事業にも貢献したとのこと。
そしてこんなところに、「富岡製糸場と絹産業遺産群」の世界遺産登録記念碑がありました。ひっそりと立っているので、見落とさないように要注意ですね!
こちらは記念碑の近くにある寄宿舎です。外観のみの展示ですが、古い窓ガラスの向こうに女工さんたちが暮らした部屋が見えます。キャプションによると、寄宿舎のなかにはかつて流行したアイドルや俳優のポスターが貼られたままになった部屋もあるそうです。工場で働いていた若い女性たちの暮らしぶりが浮かんできますね。
社宅群には蚕や桑の生態展示も!
富岡製糸場の社宅群を利用した展示スペースでは、お蚕様が小規模で飼育されています。製糸場へやって来る前の繭がどんなふうに生まれるのか、気になった方はお蚕様と対面してみては?
屋外スペースでは、お蚕様が食べる桑も生態展示されています。この写真は、ぐんぐん伸びる桑。わたしの背丈よりも遥かに高く生い茂っていました。
【おまけ】ランチには工女さんも食べたカレーを
ランチタイムには、富岡製糸場から徒歩数分の「高田食堂」へ。かつて富岡製糸場で働いていた女性たちも食事をしたという老舗です。お店の前には、富岡市のキャラクターであるお富ちゃんがいました。
人気メニューはレトロなカレー。ぴりっとスパイシーな辛口で、大きめサイズにカットされた豚肉がごろっと入っています。今日のような暑くて汗だくになる日にも元気が出るお味です。
なんと、客席には世界遺産登録をお祝いする片倉工業のうちわが置いてありました。「一緒に過ごした時間を、誇りに思います。ありがとう。」とメッセージが書かれています。
片倉工業は、富岡製糸場の民間最後のオーナーであり、操業を止めた後も長きにわたり建物や機械の保全に努めた背景があります。そんな同社からのハートフルなメッセージを読んで、思わずあたたかい気持ちになったのでした。
着物と群馬、まだまだ知らないことがたくさんあります。近いうちに、また遊びに行きたいと思います♡
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