お家にあるお父さんやお祖父さんの男着物は、女性が着ることもできます。男物と女物は仕立て方に違いがあるので、長着の場合はおはしょりを作って着るには身丈が足りないかもしれません。でも、お持ちの羽織ならそのまま着られちゃうかも! せっかく着られるものを持っているなら、大切な親族の着物をぜひ活用しましょう。
ここでは、男物の羽織を女性が着るコーディネートをご紹介します。
【パターン1】男物の羽織を渋く着る
初めにご紹介するのは、男物の羽織を女性が渋めにコーデして着るパターンです。わたしが持っている羽織は父の大島紬。定番の紺色の亀甲絣なので、似ているものを持っている方も多いはず。今回はこんな取り合わせにしてみました。
モノトーンの縞の長着に、同じくモノトーンの博多名古屋帯の取り合わせ。どちらも普段からよく着ている女物です。王道なメンズのコーデを模して、色数を抑えています。いつもの感覚だと、長着と帯が地味なときは、帯揚げ・帯締めに目を引くようなきれいな差し色を使いたくなるのですが、ぐっとこらえます。ここがメンズライクに見せる大事なポイントじゃないかな。その代わり、半衿に明るい色を入れたら完成です。
なお、こちらのコーデでは羽織紐もメンズのアイテムを使っています。男物の羽織と一緒にお家で羽織紐を発見したら、このように渋めコーデで使ってみてはいかがでしょうか。
余談ですが、男物の羽織には身八つ口がないので、肌寒い時期は防寒の面で快適です。例年暑い日が多く、通気性が良いほうが快適なことも多々ありますが、やはり風が冷たい日にはほっとします!
外出先ではこんな様子です。ちなみに、この日は腕時計も祖父から受け継いだメンズのものを着けていました。手元が羽織の雰囲気に馴染んでいる気がする!
【パターン2】男物の着物を可愛らしく着る
男物の羽織を女性が可愛らしくコーデして着るパターンです。個人的には花柄の小紋に合わせたとき、もっとも絶妙なバランスだと感じました。洋装でいうと、ワンピースにジャケットを羽織る甘辛mixのようなイメージかな。わたしの手持ちの着物は基本的に渋め寄りなので、ほかの方のコーデ例も見てみたいですね。
一つ目は、白地に菊文様の小紋との取り合わせです。この着物は八掛が淡いピンクで、元々もう少しクールに着たいと思っていました。やや出番が少なかったのですが、男物の羽織と合わせると自分らしく着られるようになりましたよ。ちなみに、帯は男物の絞りの兵児帯を広めの幅で巻いています。このコーデのように帯まで男物で統一しなくても、たとえば淡いピンクの名古屋帯でも良かったかな。
二つ目は紺地にピンクの花柄のウールとの取り合わせです。このウールはアンサンブルで、羽織だけ男物にチェンジしてみました。ハートの帯留めとコットンの半幅帯で、真冬のほっこり系コーデに。モチーフとしては可愛い系統に寄せていますが、マフラーや手袋などの小物がメンズライクなので、どちらかというと渋めになっています。小物類をペールブルーにしたら全体的に可愛い寄りになりそうです。
このように女物のアンサンブルのコーデと並べて比較してみると、これだけ色が似ているのに羽織が無地感になるだけで雰囲気が変わるのがわかります。ウールと羽織が同系色なので、さり気なく着られます。もしわたしと似たような羽織をお持ちなら、ウールの上に羽織ってみるのもいいかもしれませんね。
【番外編】男物を女物に仕立て替え
特に思い入れのある着物は、男物から女物へ仕立て替える選択肢もあります。それなりの時間と費用がかかりますが、ストーリーのある特別な一着になるので、着物を頻繁に着る方は検討してみてはいかがでしょうか。男着物から女着物へ仕立て替えのビフォーアフターは、こちらの記事でご紹介しています。
おまけ
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