二月に入り、まだまだ寒い日が続きます。皆さまお風邪などひかれずに元気でお過ごしでしょうか。
この時期を代表する植物文様に「椿」があります。一年でもっとも寒さが厳しい季節に艶やかな花を咲かせる椿は、銘仙のデザインにもよく登場します。わたし自身、椿は好きな花の一つでして、ちょうど昨年に椿文様の紬を仕立てたところです♡
今回は、そんな椿文様の銘仙を集めた展覧会「麗しのカメリア銘仙展」へ行ってきました! 会期は残すところあと少しですが、秩父へお越しの際はぜひちちぶ銘仙館ギャラリーでご覧になってください。
【イベント詳細】 会期:2025年1月18日(土)~2025年2月15日(月) 開催場所:ちちぶ銘仙館ギャラリー |
真っ赤な椿文様の銘仙がお出迎え

ギャラリーに足を踏み入れると、元気いっぱいな赤色の銘仙がお出迎えしてくれました。そうそう、こういう大胆さが銘仙らしくていいのよねぇ。それにしても、この空間に展示されている全ての銘仙が椿文様であるとは驚きです。銘仙のデザインとしていかに椿が好まれていたかがわかります。

今回の展示の中でもっとも大きい椿文様はこちらの着物でしょうか。強弱のついた太い線と、いかにも椿らしい真っ赤な色に圧倒されました。こんなお洒落な銘仙、一体どんな方が着ていたのでしょうね。
紅白だけじゃない!色とりどりの椿文様

椿の花の色といえば一般的には赤や白をイメージしますが、銘仙のデザインでは定番の紅白にとどまらない多彩な色使いが見られます。たとえばこちらの銘仙着物・羽織では、椿の花弁やおしべに黄色や緑が使われています。

とりわけ強く惹かれたのがこちらの銘仙です。地の色はガツンと来るショッキングピンクで、なんと椿の花弁はブルー。この思い切った色使い、さすがは銘仙ですね。キャプションによると、植物の枝葉を唐草文様風にアレンジするのは、秩父銘仙によく見られる表現とのことです。

こんな銘仙もありました。右手前側の羽織では、椿の花弁が切り嵌めのように複数の色柄で表現されています。左側の着物では、菊と椿がグレーで描かれて、ポイントで黄色と青が使われていますね。右奥側の着物は、まるでハイビスカスのようなグラデーションで椿が彩られています。同じ椿を題材にした着物で、これだけ多様な表現がなされていたことに驚きます。
アンティーク銘仙を復刻アレンジした反物

秩父地域では、しばしばアンティーク銘仙の復刻が行われています。左側の反物は、今回の展覧会に出展されているちちぶ銘仙館所蔵の銘仙着物を復刻し、色数やデザインにアレンジを加えたものだそうです。右側の着物は、復刻元のアンティーク銘仙になります。

両者を比較してみると、アレンジによっておしべの部分に色が足され、また葉の中央に葉脈が描かれているのがわかります。元の銘仙よりも少し写実的な雰囲気に近づいていますね。個人的に、復刻銘仙が現代にどうアレンジされるのか新旧のデザインや配色を見比べるのが好きなので、こちらは特に注目して見た展示物の一つでした。
銘仙と椿にまつわるエピソードも

会場のキャプションでは、椿と着物文化との関わりが解説されています。現代を生きるわたしたちが着物で装うときもなお、植物文様はもっとも多く触れる意匠の一つであり、着物の重要な表現の一つであり続けています。こうして特定の植物文様にフォーカスして銘仙を考えるのも楽しいですね。




椿をモチーフにした着物だけで、こんなに多様なデザインがあったとは。改めて、銘仙の表現の引き出しの多さを実感した展覧会でした。これからも数多くの銘仙に触れることで、着物の可能性を学びたいです。

今回の展覧会以降も、ちちぶ銘仙館ギャラリーでは銘仙の展覧会が企画されているようです。鉄道各駅から徒歩でアクセスできるので、秩父へ遊びに行かれる際は、ぜひちちぶ銘仙館へ足を運んでみてはいかがでしょうか?
【イベント詳細】 会期:2025年1月18日(土)~2025年2月15日(月) 開催場所:ちちぶ銘仙館ギャラリー |
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今と昔の秩父銘仙の生産者を、レトロなちちぶ銘仙館を舞台に描いた小説です。大正~昭和時代に銘仙の織り子として働いた女性たちのインタヴューを読み、おばあちゃんたちと対話したくなって書きました。こちらも冒頭部分を無料公開しています。
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