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着物ファンが「ポケモン×工芸展」へ行く【写真付レポート】

ポケモン×工芸展のパネル

2024年11月1日から 2025年2月2日にかけて東京会場(麻布台ヒルズ ギャラリー)で開催された「ポケモン×工芸展―美とわざの大発見―」を観てきました。

ポケモンといえば、小学生の頃に赤・緑や金・銀をプレイした世代でして、生涯でもっとも思い入れのあるゲームの一つです(ちなみにわたしが持っていたのは、ちょっとレアな「青」版でした♡)。そんなポケモンが伝統的な着物の産地とコラボレーションするなんて、着物ファンとして絶対に見逃せません!

この記事では、「ポケモン×工芸展」東京会場で展示された作品の中でも、特に着物に関連する作品を取り上げて、着物を着る人の目線で素敵だと感じたポイントをご紹介します。



「ポケモン×工芸展」の着物関連作品


紅型の着物と帯(城間栄市さんの作品)

ポケモン×工芸展の紅型着物(城間栄市さんの作品)

城間栄市さんによる、紅型の着物と帯の作品です。沖縄の染めの技法である紅型で、水辺で暮らすポケモンが描かれています。紅型らしい鮮やかな色づかいと、生き生きとしたみずポケモンたちの姿は、まるで夢に見た海のポケモンリゾートのようですね。

こちらは帯の反物です。熱帯に生息するアダンの葉の向こうに、気持ちよく晴れた空の色が透けて見えます。すぐそこに海があるかのような雰囲気。よく見ると、ドククラゲ、ヒトデマン、ハリーセンなどのみずポケモンや、モンスターボールの文様が描かれています。

着物のほうも拡大してみました。ちょうどサニーゴのトゲの先端あたりを見ると、紅型の隈取りによる表現がわかりやすいですね。キャプションによると、稲妻文様は紅型によく見られ、子どもの成長を祈る古典文様なのだそうです。


友禅の着物と帯(水橋さおりさんの作品)

水橋さおりさんによる、友禅の着物と帯の作品です。青い訪問着には、友禅の技法で広々とした高い空が描かれています。風が吹いて、雲が流れるなか、ひこうタイプのチルットやチルタリスたちがのびのびと飛んでいます。

ポケモン×工芸展の友禅着物(水橋さおりさんの作品)

思えばチルットとチルタリスの羽は、着物の伝統文様である瑞雲と重なりますね。めいめいが雲の中に隠れてみたり、こちらへ背を向けていたり……。一匹ずつ様子をじっくりと見ていたくなります。落款にさり気なく入ったモンスターボールも可愛らしい。

ポケモン×工芸展の友禅帯(水橋さおりさんの作品)

そして、帯地のメガチルタリスの迫力よ! 可愛らしい顔つきですが、伝統文様の鳳凰、あるいはポケモンのホウオウにも劣らぬ力強さ。今回の展示では訪問着の肩回りや帯の前柄が見られませんでしたが、着姿を360度眺めてみたいものです。


彫金のブローチと帯留(桂盛仁さんの作品)

ポケモン×工芸展の彫金の帯留(桂盛仁さんの作品)

桂盛仁さんによる、彫金のブローチと帯留の作品です。ブラッキーのアイデンティティでもある特別な黒を表現するために、赤銅に含める金の割合を微細に調整されているそうです。キャプションから引用すると、その量は絶対的に5%!とのことで、ポケモンのわざみたいな言い切り方が格好いいですね。

ポケモン×工芸展の彫金の帯留(桂盛仁さんの作品)

帯留めっていわばジュエリーですから、この作品のようにただならぬ存在感を放つ品物って、小さくても目を引くんですよね。会場でも、ブラッキーの黒に「わあ!」と声をあげる人の多いこと。スマホのカメラではどうしても捉えきれないので、ぜひどこかで実物をご覧になっていただきたいです。

着物好きな方にはきっと伝わると思うのですが、ブローチが並んでいるとき、そこに帯留があったときの喜びって一入ですよね。帯留は一般的にはレアな存在なので、着物にハマると世の中の全てのブローチが帯留に見えてきます。こちらの作品群では帯留が2/3を占めていたので、ついテンションが上がってしまいました。


江戸小紋の着物(小宮康義さんの作品)

ポケモン×工芸展の江戸小紋の着物(小宮康義さんの作品)

小宮康義さんによる、江戸小紋の着物の作品です。左から「ゴースト(紫色)」「ニョロゾ(青色)」「タマゲタケ、モロバレル(朱色)」のポケモンたちが題材となっています。非常に細かい点と線で表現された江戸小紋は、遠目に見ると無地のようで、どこにポケモンがいるのかわかりません。こういうところに、着物好きはぐっときちゃうんですよね……。

わかりやすいよう、画質を保てるギリギリの範囲で写真を拡大したところ、やっとゴーストとニョロゾが見えるようになりました。柄の細かさに改めてため息が出ます。

ポケモン×工芸展の江戸小紋の着物(小宮康義さんの作品)

一見するとポケモンのデザインと気づかないので、帯小物でそれとなく演出するような着物コーデをやってみたいなぁ。ニョロゾの江戸小紋×王冠文様の帯×カエルの帯留めの取り合わせなんて、いかがでしょうか♡


【おまけ】「ポケモン×工芸展」当日の着物コーデ

最後に、当日のわたしの着物コーディネートをご紹介します。

「ポケモン×工芸展」に注目している着物好きの皆さんには、国内の数ある産地の中でも、とりわけ応援している地域があるのではないでしょうか。わたしは地元埼玉県の秩父銘仙が大好きです。ぜひとも秩父銘仙で展覧会へ足を運びたかったのですが、当日は生憎の悪天候でしたので、秩父銘仙を帯揚げとして身に着けることに。小さな部分ではありますが、縞着物とよろけ縞の帯揚げの取り合わせで、心躍る着物コーディネートになりました♡

ポケモン×工芸展の展示を見る着物の人

さて、初めてプレイした初代のゲームから言葉を借りるとしたら、「ポケモンのちからってすげー!」という感じでしょうか。伝統工芸の一つである着物が展示された空間に、これだけたくさんの人が集まったことに、着物ファンの端くれとして熱い気持ちになりました。ポケモン×伝統工芸、なんて素晴らしい組み合わせなのでしょうね♡


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