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ちちぶ銘仙館で機織りを体験してみた【写真付レポート】

織機に座る様子

埼玉県秩父市にある「ちちぶ銘仙館(以下、銘仙館)」を見学しました。銘仙館には、秩父銘仙をはじめとした秩父の織物の歴史と技術を伝える貴重な資料が展示されています。埼玉で暮らす秩父銘仙ファンとしては、決して見逃せない施設ですね!

今回は、現代物の秩父銘仙を着て、着物の里帰りをかねて秩父を小旅行する様子をご紹介します。



御花畑駅から徒歩でちちぶ銘仙館へ

ちちぶ銘仙館の看板

熊谷から秩父鉄道に乗ること小一時間。御花畑駅から徒歩で銘仙館を目指します。ご覧の通り、当日は晩秋のからっとした気候で絶好の着物日和です。銘仙館方面へ歩くと、途中で看板を発見! 御花畑駅から徒歩10分とのことですが、それほど坂もなく歩きやすい道のりなので、着物で散歩がてら歩くのもいいかもしれません。

現代物の秩父銘仙を着た人

先ほどの看板に従って住宅街の奥へとまっすぐ進むと、間もなく銘仙館に到着しました。

銘仙館の建物は、かつて埼玉県繊維工業試験場だったそうです。建物そのものも国の登録有形文化財で見ごたえがあります。着物ファンはもちろん、建築物がお好きな方が見学しても楽しめそうです。


秩父銘仙の歴史を学べる展示

アンティーク秩父銘仙の展示風景

古い建物の廊下を進むと、まずはアンティーク秩父銘仙がずらりと並ぶギャラリーに到着。待ってましたー! いきなり駆け寄ってバチバチと写真を撮ります。最初の部屋からこんなにハイテンションで、果たして最後まで体力が持つのだろうか……?

アンティーク秩父銘仙の前に現代物の秩父銘仙を着た人が立っている

ギャラリーには、アンティーク秩父銘仙の羽織を試着できる夢のようなコーナーがありました。ハンガーラックにはレトロ可愛い色柄がたっぷり。これ、全部着ていいの?!

遠慮なく何枚も羽織らせていただきました。姿見をチェックして「おっ、いいねいいね!」と自画自賛。このように着物で足を運ぶと銘仙コーデを楽しめるので、ぜひお気に入りの一着で遊びに行ってみましょう。こうしている間に、だんだん秩父銘仙の羽織も欲しくなってきました。もしかしたらこの展示は着物ファンを捕まえる罠だったのかもね。(笑) なお、展示品の羽織は古い品物なので、羽織るときはやさしく扱ってあげましょう。

それにしても、銘仙館の館内はフォトスポットが充実しています。建物そのものが美しいので、どこで撮っても良い写真になりそうです。

何台もの織機が並んでいる

渡り廊下の先にある複数の展示室では、秩父銘仙の製造に関わるさまざまな機械を見学できます。驚いたのが、これらの機械はどれも現役で、現在も秩父銘仙の後継者育成講座や実演などで使われているのだそうです! こちらは手動で機織りをする「高機」。機械をよく見ると、講座の生徒さんが制作している途中の織物がセットされていて、今でも織機としてしっかりと働いていることがわかります。

整経場で数十本の糸が整えられている

ほかにも、繭から糸を取る「糸繰」、経糸を染める「捺染」など、複数の工程の展示室があります。こちらの写真は、経糸を織機にセットするために整える「整経」の工程の展示室。「整経機」から伸びる数十本の糸がぴんと張って、美しいですね。一枚の反物が出来上がるまでにいかに多くの工程があるかを知り、改めて着物の重みに気が引き締まります……。

ここまで撮影した展示室や機械は、銘仙館の展示品のほんの一部です。秩父織物の歴史と技術を学べる展示の数々を、ぜひ現地でご覧になってみてください。


高機でコースターの手織り体験

銘仙館では、手織り・型染め・ほぐし捺染などの技術を体験できちゃいます! なかでも手織り体験は衣服が汚れる心配がないので、着物で行っても参加できるのがうれしい。というわけで、先ほど写真でご紹介したのと同じ高機で、コースターの手織りに挑戦してみました。

糸を選んでいる様子

まずは緯糸を選びます。次の工程で複数の糸を一本に束ねるので、何種類かの糸を選ぶのだそうです。棚に並んでいる糸は色も質感もさまざま。迷うなあ!

選んだ5つの糸、青色やラメの銀糸など

結局わたしが選んだ糸はこちら。最初に好みの青色を選んで、ブルーと相性の良さそうな淡い色、キラキラの銀糸、ほっこりした糸などをチョイスしました。

糸を巻いている様子

五本の糸を、シャトル(=緯糸を通す道具)の役割をする木の板に巻きつけます。

織機に座る様子

さて、いよいよ機織りの位置につきました。座る部分は木の板です。やや幅が狭いように見えましたが、実際に座ってみると意外と安定感があります。踏木に左右の足を乗せてスタンバイ!

織り方を教わっている様子

事前にセットされている白い経糸に、先ほど選んだ緯糸を通して織っていきます。ここからは、短い動画で高機の動きをご覧ください。

緯糸を通して、筬(おさ)をトントンと引き寄せたら、踏木で経糸の上下を入れ替えます。以降はこの動作を左右交互に繰り返します。こうして振り返ってみると、アンドロイドのようなぎこちない動きですね……!(笑)

右、左、右、左……ブツブツとつぶやいて確認しながら織っています。「少しは慣れてきたかな?」と油断して雑談をすると、途端にどこまで進めたのかわからなくなってしまう! シンプルな手順の繰り返しではありますが、ある程度長く続けてみると、なかなかややこしい作業だと感じます。

少しずつ織り上がってきました。青い糸の色がもっと強く出るかと予想していましたが、白ベースの織物になりました。こうして仕上がりをイメージできるようになると、糸の選び方も色んなパターンを試してみたくなりますね!

機を織っている手元

コースターに必要な長さの分が織り上がったら、白い緯糸で端を織って仕上げます。最後に、経糸から織り上がった部分を切り離します。

完成した織物を手に持つ人

じゃーん! コースターが完成しました。機織りの仕組みは、これまでに本で読んだり動画で見たりしたことがありましたが、実際に体験してみると、より具体的に織物が出来上がるまでの流れを想像できるようになりました。皆さんも銘仙館へ行ったら、ぜひ気になる体験にチャレンジしてみてくださいね。


完成した織物のコースター

銘仙館では、イベントなど特別な機会に見られる実演もあるそうです。秩父は首都圏からアクセスしやすい観光地なので、着物を着て行く小旅行で銘仙館へ足を運んでみるのも良いですね。わたしも、今後気になるイベントがあればまた着物で銘仙館を訪れたいと思います!


おまけ

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着物の小説『銘仙日和』

今と昔の秩父銘仙の生産者を、レトロなちちぶ銘仙館を舞台に描いた小説です。大正~昭和時代に銘仙の織り子として働いた女性たちのインタヴューを読み、おばあちゃんたちと対話したくなって書きました。こちらも冒頭部分を無料公開しています。


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