Home 着物

【コラム】新しい節目を作ろう

 今年もまた、着物にとって難関の9月がやってきました。今は秋なのか、はたまた夏の続きなのか、気分はどっちつかずのまま……。わたしは手持ちの夏物を着倒してしまい、涼しげな色やモチーフにもすっかり飽きて、次の季節の着物を着られる日を待ちわびています。それでも、秋らしい秋が来るのはまだまだ先になりそうです。ここ最近は色合いや小物に工夫しながら日々のコーデを考えつつも、根本的に「なんだか退屈だなあ」という気分を拭い切れずにおります。

 9月中旬に差し掛かりましたが、本日の熊谷の気温は37℃。8月まではなんとか我慢できていた暑さが、しだいに心身にこたえるようになってきました。盛夏に暑いのは当たり前と思ってここまで乗り切ったものの、「さすがに9月になれば少しは涼しくなるだろう」と期待したのがよくなかったのかもしれません。たまには単衣が着られる日もあるはず、なんて考えは甘かった。今でも懲りずに「さすがに10月になれば少しは涼しくなるだろう」と期待していますが、こんな調子でずるずると過ごしていたら、楽しめるはずの着物も楽しめなくなってしまいます。

 きっと、この先もずっと9月はれっきとした「夏」なのだろうから、いっそのこと、新しい節目を作ってしまおうか。わたしの感覚だと、目安として5-7月を「夏前半」、8-10月を「夏後半」とするのがちょうどよさそうです。従来の涼しげな夏着物は、夏前半に着るとする。問題は夏後半で、こちらは夏と同様の素材感で汗や突然の豪雨に備えながらも、秋らしい色合いや文様のものを着たい。浴衣は浴衣、薄物は薄物でも、「これは次の季節の着物なのだ」という新鮮な気持ちで着たいわけです。単なる気持ちの問題ではありますが、移ろいゆくものを追いかけていたいという性は、そうでもしなければ落ち着きようがない。これまでの着物生活では、夏後半に該当するような着物を揃えてこなかったので、今後は長い目で見てこのあたりを充実させていきたいと考えています。

 夏物から単衣への衣替えは、気候のためにほぼ不可能となってしまいました。それでも、衣替えという節目自体はこの先もずっと必要なのではないでしょうか。毎年毎年「なんだか退屈だなあ」と9月を過ごすのではなく、自分なりに新しい節目を作って「9月になったらあの着物が着られる!」と楽しい気持ちになれるような、そんな桐箪笥になったらいいなと夢見ています。さて、来年の自分に大いに期待!

未衣子


Home 着物

SNSで着物コーデを投稿しています。ぜひフォローしてください!


着物のエッセー『週末着物の三年間』

着物のエッセー『週末着物の三年間』

毎週末に着物を着る生活をエッセーに綴りました。着物を着る方には、きっとクスッと笑ったり共感したりと、一緒に楽しんでいただけるはず! お気に入りのコーデ写真(白黒)も掲載しています。冒頭部分を無料公開しているので、ぜひご覧ください。

着物の小説『銘仙日和』

今と昔の秩父銘仙の生産者を、レトロなちちぶ銘仙館を舞台に描いた小説です。大正~昭和時代に銘仙の織り子として働いた女性たちのインタヴューを読み、おばあちゃんたちと対話したくなって書きました。こちらも冒頭部分を無料公開しています。


Online Shop