【ヨガ日記】太陽礼拝108回

ヨガの「パールシュヴァバカーサナ」のポーズをとる人

年の瀬が近づくと、どこからともなく忍び寄ってくる「太陽礼拝108回」。そうか、もうそんな時期か――とスケジュールを確認しては、慌てて体力づくりの計画を立て始めるあたりからが、年末の始まりです。

太陽礼拝108回とは、ヨガのポーズを一連の流れで行う「太陽礼拝」を108回続けて行うこと。ヨガスタジオなどでよく、年末年始に太陽礼拝108回のワークショップが開催されています。年末の108回といえば、煩悩の数だけ撞く「除夜の鐘」が想起されますが、やはりこれにちなんだ回数とのことです。さて、太陽礼拝を108回も行うとどれくらいの時間がかかるのか? わたしの経験上、先生のインストラクションに合わせても一人で動いても、だいたい2時間半ほどで終わります。一体どれほどの運動量なのか気になったら、ぜひ動画などで1回分の太陽礼拝を見てみてください。

例年、年末年始は太陽礼拝108回の当日へ向けて体力づくりをして、その後は1週間ほど筋肉痛とともに過ごします。せっかくの休暇ですから食って寝て過ごしたい気持ちも山々なのですが、少しずつ体を慣らしていかなければ、後々にもっと大変な思いをすることになります。108回の太陽礼拝をするには、それなりのエネルギーが必要です。ならば、どうしてそこまでして太陽礼拝をしなければならないのか。その理由は、食って寝ての正月よりも太陽礼拝に魅惑されているからに尽きるのでしょう。

自分の感覚では、太陽礼拝を数十回ほど繰り返している最中「まるで合わせ鏡のなかにいるようだ」とおぼえます。いつからか延々と太陽礼拝を続けていて、ふと気づいた瞬間にもまた太陽礼拝をしているのです。美しいなあ。もちろん、108回を終えた後には達成感や爽快感もあるかもしれませんが、個人的には始まりからも終わりからも離れた時間のほうに心惹かれます。間近に迫った次の太陽礼拝108回へ向けて、今日も懲りずに調整中です。ポーズは今年ラストなのでちょっと浮いてみまして、パールシュヴァバカーサナ。

話は変わりますが、ゲーム「大乱闘スマッシュブラザーズ」にWii Fitトレーナーが登場するようになってから、ヨガの超能力といえば太陽礼拝ビームのイメージが定着してきた気がします。それまでは「ストリートファイター」のダルシムが使うヨガファイアでしたね。インドの高名なヨガの先生も、ヨガを極めるとどんな超能力が使えるのかと、質問を受けることがあるそうです。これに関して、アイアンガー先生の『ハタヨガの神髄』から印象的だった一節を引いて、今年のヨガ日記の締めにしたいと思います。

残念なことに、今日出版されているヨガの本のほとんどは一般受けを狙って中身がなく、時に間違った方向に導くことさえあって、その主題にもまず第一に掲げる解説にも価値を認めることができない。そうした本の読者たちから、私まで訊ねられることがある。曰く、強酸液を飲めるか? ガラスを食べられるか? 火の上を歩けるか? 姿を消せるか? 何か他に魔法のようなことができるか、と。

『ハタヨガの神髄』序 B.K.S.アイアンガー 沖正弘 監訳