もっと着物を着なさいと先輩は言う

日本庭園の太鼓橋に着物の人が立っている

着物関連のイベントが続き、着物を通じて多くの人と話したひと月だった。印象に残る出来事もあったので、初心者の頃の楽しさを忘れないように、書き記しておきたい。

あなたもお客さんですよね?

先日の東京キモノショーでは、着物屋さんの紹介にて、呉服問屋さんの社内を見学した。ツアーに参加したのは女子数名。見たこともない量の反物がピラミッドのごとく積み上げられているさまに驚いた。普段、お店でこれほどたくさんの反物を一度に見られる機会はないので、目がハートになっていたと思う。そんなツアーのメンバーだが、誰かが気になる品物を見つけると、あーだこーだお世話してくれるのが面白い。「紫が気になるけど、紺のほうが帯合わせが楽かな?」なんて迷っていると、すかさず「でも、あんたがときめいているのは紫なんでしょ!?」とツッコミを入れてくる。うんうん、買い物ってそうだよね。結局は実用性が高いものより、一番ときめいたものをヘビロテするんだわ。さらに、「あっちの色も気になる!」とつぶやけば、誰かがすっと反物を持ってきてくれるし、「さっきの帯はどこに行った?」と困ったら、みんなで一緒に探し出してくれる。あなたもお客さんですよね? お買い物好き同士、初対面にもかかわらず、ついほかの人のお買い物を手伝ってしまうのであった。わたしは女子校出身で、若い頃こうして女子とわちゃわちゃお買い物をしながら育ったので、この雰囲気がすごく懐かしい。もし次に同じような機会があったら、自分も誰かのお買い物に自然と手を差し伸べられたらいいな。ちなみに、このとき一緒に回ったメンバーの一人が、今日の日記の写真を撮影してくれたカメラマンである。うーん、なんと着物の写真を撮るのが上手い。

もっと着なさい!

これまで着付け教室に通ったことがなかったので、着物屋さんのイベントで着付けのプライベートレッスンを単発受講してみた。この先生が大変おしゃべりな方で、自分の母親とそっくりなタイプだったので、実家を感じて妙に落ち着いて接してしまった。驚いたのが、先生がわたしの着ていた大島を見るやいなや「これはお母さまのものかな? そして、お母さまはあまり着物を着なかったでしょう、フフ♪」と仰ったこと。わたしの大島は八掛が赤いので、母譲りであることは想像に難くないのだが、まさかまったく着ていないことまで図星とは! 先生いわく、大島は着込むと生地がさらになじんでくるという。「だから、もっとたくさん着てあげてね♪」と言われて、めちゃくちゃワクワクした。というのも、週に1回のペースで着物を着ていると、人から「もっと着なさい」とはほとんど言われないからだ。この大島だって、自分では着すぎていないかと心配していたのに、“もっと”だってさ! ちなみに、同日に着物の大先輩に「大島の八掛を現代風の色に直すべきか迷っている」と相談したら「昔の人は大島をたくさん着て、天地や裏表を交換して仕立て直したのだから、まずはもっとたくさん着て、そのときが来たら直したら?」と仰っていた。なんと同じ日に二度目の“もっと”である! 帯合わせを考慮すると色を変えても良さそうだが、人から八掛を褒められることも多いし、何より祖母が選んだ色という思い入れもある。そんななかで「もっと着てから」というアドバイスはためになるだけでなく、嬉しかった。あと何年かかるかな?


毎週末に着物を着る生活をエッセーに綴りました。着物を着る方には、きっとクスッと笑ったり共感したりと、一緒に楽しんでいただけるはず! お気に入りのコーデの写真も掲載しています。冒頭部分を無料公開しているので、ぜひ以下からご覧ください。

続いてこちらは、着物を始めて1年目に書いたエッセーです。初心者ならではの勢いで、広くて深~い着物の世界にいきなり飛び込んだら、毎日が冒険のよう! まだ着物を始めて間もない方は、身近な着物仲間だと思って読んでくださると嬉しいです!


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