こんな夢を見た。白昼のテーマパークで、焦ってなにかを探す女がいる。まやかしのように飾り立てられた絢爛な遊歩道には、時を忘れて浮かれる人ばかりが通り過ぎ、追い立てられて青白い顔をしたその女だけが、奇妙に取り残されていた。あまりに懸命に探しているので、どうしたのかと声をかけると、夕刻までに硝子製の管を見つけられなければ、運命の相手とは結ばれないのだという。幸い私には用がなかったので、そこで女と一緒に硝子製の管を探すことにした。ペーブメントの隙間から、光る街路樹の枝先まで、目を凝らしてくまなく見て回ってみる。硝子製の管というのが、一体なにものであるかも知らずに、ただ女を助けたい一心であちこちを這いつくばった。すると、遠くのほうであの女が「アッ」と声をあげる。駆け寄ってみると、彼女が指さす露店の棒付きキャンディ売り場に、硝子製の管が紛れ込んでいた。女はうっとりとして、今にも涙をこぼしそうになりながら、それを手に取る。すると間もなく、硝子製の管はバリンと軽快な音を立てて割れてしまった。二人して、あっと息をのんだ。呆気に取られていると、女は「伝え忘れていたけれど、壊れやすいの」とだけ言い、ふたたび硝子製の管を探しに走り去っていった。それから、女は何度か硝子製の管を見つけていたけれども、手に取るたびに砕け散ってしまう。私のほうは、未だにひとつも見つけられていない。やがて日が傾いて、辺りが一斉に黄色く染まり始める頃に、女は「もうだめだ」と泣き出した。そのとき、私は夕日に照らされたごみ捨て場がやけに輝いているのに気がついた。山積みになった硝子の破片をまさぐると、発光するものの正体を手に取る。紛れもなく、本物の硝子製の管だ。それに、割れていない。私は間に合ったのだ。落胆して泣き続ける女に、もう泣くことはないと言って、硝子製の管を見せようとした。だが、女はこちらへ見向きもせず、ひたすらに泣き続けている。こうしている間にも、太陽はますます地平線へと吸い寄せられてゆく。思わず女を抱き締めた。途端に、握っていた硝子製の管が、バリンと軽快な音を立てて割れてしまった。いつしかすっかりと泣き止んで、こちらをじっと見上げている女が「どうしてそんな顔をしているの」と尋ねてくる。